アニメーション製作陣
インタビュー
監督を務める菅原優太さん、「スタジオ・ライブ」代表の神志那弘志さん、撮影監督の町田啓さんに、製作の裏側を伺いました。
製作に取り組むにあたり、脚本から受けた印象をお聞かせいただけますか?
菅原:前回にひきつづき、久住さんの原作案を何案かいただき、最終的に『青春バンド編』が選ばれました。「青春路線が来たな」と、つぐるを含めた3人の青年が挫折から新たなる決意までの成長過程を楽しみに読みました。
町田:「好きなものは色褪せない」のだなあと、あらためて感じました。今回のテーマが音楽でしたが、若い時に好きで夢中になったものは、その道に進むとしても他の道に進んで趣味の範囲になったとしても、好きであることには変わりないと思います。
私の場合はアニメですが、10代の頃に夢中になり、その道に進んで幸い10年以上つづけられていますが、いまも熱量は変わらないままです。
音楽をテーマにした作品でしたが、苦労した点や視聴者に見てほしいポイントがあればお伺いしたいです。
菅原:ギターを演奏しているシーンですね。作画は「 iichiko story ep.2『野の花は海へ』」と同様、スタジオライブ様のお力をお借りしました。作画にはモーションキャプチャーという手法を使用しています。
アーティスト兼モーションアクターの方に実際にギターを弾いてもらい、その動きをカメラで撮り込み、3Dに落とし込んだものを2Dの作画で描き起こすという、かなり凝った作画です。リアルな動きがギター音源とリンクしているので、ぜひとも何度でも観て、聴いていただければと思います。
神志那:音楽、とくに楽器を演奏する作画はウソがつけません。ギターを弾く様子の作画は、楽器の持ち方から勉強することになり苦労はあります。が、アニメーターとしスキルアップできたのではないかと思います。
菅原:ちなみに、つぐるが部屋でギターを弾いているカットが後半にもあるのですが、こちらにはギターの音を入れてあります。実はこのギターの曲は、前作の「iichiko story ep.2『野の花は海へ』」の主題歌『きっと変わらない色』のイントロのアルペジオなんです。2つの作品を聴き比べてみるのも面白いと思います。
町田:撮影部としてはライブシーンですね。空間の一体感、光が溢れ、盛り上がっている雰囲気を意識しました。また、居酒屋シーンは監督からぬくもりが欲しいというオーダーがありましたので、ソフトな印象になるような画面作りと若干オレンジ系の色フィルターを入れています。
今回の2つのポスターについて、アニメーションを製作する上で心掛けたことや演出でのポイントをお聞かせください。
町田:最近関わらせていただいている現場では、関わる人も多く、周りのメンバーの経験値、実力の高さを見て圧倒されています。「ポスターから始まるストーリー」作品内容を踏まえた上で自分に求められていることは何か、できることは何かを見つめなおして作業いたしました。
今回の映像を観て喜んでいただけましたら最高です。
神志那:これから大きく広く長い人生を歩む若い人に向けて、映像が小さく狭くならないようにアニメーターも若いメンバーを揃え、伸びのびと作画してもらいました。そんな作り手の思いが、 見ていただく方にも届くと嬉しいです。
菅原:前作では「小さな私が海に立つ」=「自立」という意味で表現していましたが、今回は「孤立」として考えました。挫折からの4年の月日が、つぐるたちの考え方を変え、「逆風の中で、飛ぶ」=「自由」という答えをつぐるたちは出しました。固定観念から物事を柔軟に考えることが出来るようになった「つぐる」たちの成長を見ていただきたいです。
菅原優太(すがわら・ゆうた)
1968年生まれ。フリーランス映像クリエイター。20年間にわたり制作兼演出・作画で経験を積み、現在はクリエイティブ企画・営業・プロデュースを手掛ける。その傍らでアニメ制作のショート作品を中心に携わる。
神志那弘志(こうじな・ひろし)
アニメクリエイター集団 「スタジオ・ライブ」代表取締役兼アニメクリエイター。『エリア88』『シティハンター'91』『HUNTER×HUNTER(2011)』『劇場版 リョーマ!』『吸血鬼すぐ死ぬ』等で活躍。東映アニメーション主催の「作画アカデミー」講師を務める等、作画や演出・監督業、多岐にわたって活躍中。
町田啓(まちだ・さとし)
1983年生まれ。株式会社チップチューン撮影部所属。エイトビット、スタジオコロリド等の作品の撮影監督を務める。その他に『シン・エヴァンゲリオン劇場版』『すずめの戸締まり』等に撮影で参加。
キャストインタビュー
声優を担当したのは、春日つぐる役に小林裕介さん、ひろ役に白井悠介さん、ツッチー役に天崎滉平さん。インタビューでは、本作に込めた思いに加え、声優として活躍するまでの若き頃のエピソードも伺いました。
脚本・久住昌之さん
インタビュー
前作に引きつづき、脚本を手がけたのは漫画家でミュージシャンの久住昌之さん。長年音楽に携わってきた久住さんだからこそ描ける、音楽との向き合い方、バンドでしかなしえない仲間との絆の素晴らしさを伺いました。最近ハマっているという〈いいちこ〉の楽しみ方も必読です。