『孤独のグルメ』久住昌之が語る
初アニメーション作品『iichiko story ep.2「野の花は海へ」』
制作秘話

『孤独のグルメ』久住昌之が語る
初アニメーション作品『iichiko
story ep.2「野の花は海へ」』
制作秘話

久住昌之
『iichiko story ep.2「野の花は海へ」』の脚本を担当した久住昌之さん。数多くのテレビドラマや漫画の原作を手がけてきた久住さんですが、実はアニメーション作品はこれが初なのだとか。物語に込めた思い、制作の裏側など、貴重なインタビューを伺いました。

— 初のアニメーション作品とのことですが、
仕上がってみての率直なご感想をお聞きしたいです。

久住: ドキドキしてたぶん、なんというか、ポカンとしました。前作の『iichiko story ep.1』を見せていただき、これは、自分を逆さに振っても出てこない雰囲気、ストーリー、絵柄、世界観だなと思いました。この感じでボクの原作は、いったいどうなるんだろう?と心配してました。でも、原作がどのように映像化されるのかというドキドキ感は、「泉昌之」名義でデビューしたときからずっと変わらないんです。ボクの原作を作画の和泉晴紀さんがどう描いてくるか?と。最初、思ってたのと全然違って、ポカンとしました。それからジワジワと「これ、新しいかも」とワクワクしてきた。今回のアニメもそんな感じです。

和泉さんの絵は僕には絶対描けないような劇画タッチですし、『孤独のグルメ』のときも谷口ジローさんの絵も、信じられないくらい精緻で端正です。正直に言うと、できた漫画を最初に見たときは「これは売れないのではないか?」「面白いのだろうか?」と(笑)。でも、自分にはなかった世界観が多くの人に受け入れられていくと、だんだん「これでいいのかも」って思うようになるんです。

『iichiko story ep.2「野の花は海へ」』のアニメーションを見て、また新しい世界に足を踏み入れているな、と自分のことを思っています。こういう見せ方、やり方もありなのかと。

久住昌之

— 物語の軸になる、「何々『で』なく、何々『が』いい」ですが、
ご自身の体験がもとになっていると伺いました。

久住: 19歳のとき、喫茶店でアルバイトしたんです。その店のマスターが、ある時ボクに言ったんです。ブレンドコーヒーというのは、店主が、美味しいコーヒーを安い値段でお客様に飲んでいただくために、独自に工夫して作っているんだ。だから「ブレンドでいい」という言い方は、こっちからするとあまりいい気持ちしないもんなんだよ、本当はね。

バイトが終わった後の、掃除してる時かなんかだったと思うけど、それを聞いてハッとしました。たしかにそうだ、と。マスターはコワイお爺さんだったけど、その言葉は今も忘れませんね。実は、『孤独のグルメ』でも、井之頭五郎に、「こんなんでいい。いや、これこそがいい!」というようなセリフを言わせたこともあるんです(笑)。

— 『iichiko story』は〈いいちこ〉のポスターが題材になっています。
印象はいかがでしょうか?

久住: もう30年以上も前。20代の頃に駅で見かけて、「あの〈いいちこ〉が、こんなカッコつけたことはじめた!」とちょっと笑いながら驚いたのを覚えています。ボクにとって、〈いいちこ〉と言えば「下町のナポレオン」でしたから。

漫画家としてデビューする前、ボクは美学校で赤瀬川原平さんに学んでいたんです。赤瀬川さんは夜の講義は「緊張するから」と芋焼酎の一升瓶の横に大きなやかんを置いて、湯飲み茶碗でお湯割りをちびちび飲みながら話していました。僕ら生徒も、真似してちびちび飲みながら話を聞きました。それから1年ぐらいして〈いいちこ〉というものを知ったんです。これが、教室の芋焼酎より格段においしかった。下町のナポレオン、というコピーに納得したほどです。

それから、家でも、冬は石油ストーブの上にやかんをのせて、〈いいちこ〉のお湯割りを飲むようになりましたね。作家としてデビューしてから、バーボンや日本酒の美味しさも知ったけど、〈いいちこ〉はずっと飲んでましたね。

なので、駅でポスターを見たときのギャップには驚きました。でも、ギャップというのは、最初にも話したけど、ボクのスタイルでもあるんです。和泉さんの黒黒した劇画と、ボクの馬鹿馬鹿しい話のギャップ、ただおっさん井之頭五郎が一食食べるだけの話を、谷口さんが時間をかけて緻密に描くというギャップ。「花のズボラ飯」という可愛い主婦の話をこんなジジイが作るというギャップ(笑)。

だから、〈いいちこ〉のポスターを見たときは、ちょっと笑いながらも「これ、おもしれえじゃん!」て思いました。なんか、突き抜けてた。「iichiko」と英語で綴ってることも含めて。

久住昌之

— かなりの〈いいちこ〉好きとのことですが、
どのように楽しんできたのでしょうか?

久住: 自分の仕事場を持った30代くらいの頃、地元三鷹に「栄ちゃん」という真面目な夫婦がやっている居酒屋がありました。30代前半の4〜5年は、そこに年間300日くらい通っていましたね(笑)。飲み物は、ずっと生ビールと〈いいちこ〉お湯割りだけでした。他のもあったけど。

今いる「大茂(だいしげ)」は、もともと井の頭線の高架下にあって、朝の4〜5時までやっていたから終電後にミュージシャンや劇団の役者が集まる酒場でした。ボクは深夜2時3時まで仕事をして、それから自転車で来た。面白い人たちとたくさん出会いました。その後区画整理があり、ここに来てからもずっと通いつづけています。

ここでもやっぱり〈いいちこ〉ですが、最近はロックで飲むことが多いかな。今回、こういう企画があって、あらためて考えたら、もう40年も〈いいちこ〉飲んでるんだなあって、ちょっと呆れましたね。

久住昌之

久住昌之(くすみ・まさゆき)

1958年、東京・三鷹生まれ。マンガ家、ミュージシャン。法政大学社会学部卒。美學校・絵文字工房で、赤瀬川原平に師事。 1981年、泉晴紀(現・和泉)と組んで「泉昌之」名でマンガ家デビュー。谷口ジローと組んで描いたマンガ『孤独のグルメ』は、2012年にTVドラマ化された。『花のズボラ飯』『野武士のグルメ』『荒野のグルメ』など著作多数。

三森すずこ 新垣樽助

キャスト インタビュー

声優には、三輪すずか役に三森すずこさん、父役には新垣樽助さんを起用。数々の名作で演じてきた2人は、どのように『iichiko story ep.2「野の花は海へ」』と向き合ったのでしょうか。脚本の印象やアフレコで感じたこと、そして、〈いいちこ〉にまつわるエピソードを伺いました。

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ササノマリイ

ササノマリイさん インタビュー

映像作品に彩りを与える楽曲を制作してくれたのは、プロデューサー/シンガーのササノマリイさん。脚本と絵コンテを元にイメージを膨らませ、独自の世界観を作り上げる、ササノさんの作曲プロセスについて語っていただきました。

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アニメーション制作陣 インタビュー

〈いいちこ〉の世界をアニメーションで表現しようと試みるプロジェクト『iichiko story』。その根幹をなす映像制作に携わった制作陣にもインタビュー。
監督・菅原優太さんと若手アニメーター・久保山誠士さんに、クリエイションの舞台裏を伺いました。

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